今回は「審査報告書の深掘り」をお休みし、前回のコミナティ筋注に関連する話題として、コロナ禍で毎日のお出かけ必須アイテムになっている「マスク」についてお伝えしようと思います。
2021年の第141回日本薬学会年会において、国立医薬品食品衛生研究所の河上らのグループは、「ホルムアルデヒドについて、不織布製や布製マスクのいくつかの製品から家庭用品規制法の乳幼児製品の基準値(16μg/g)を超えるホルムアルデヒドの溶出が確認された。」と報告しています。日本薬学会第141年会(広島)/家庭用マスクに含まれる揮発性有機化学物質及び紫外線吸収剤の実態 (atlas.jp)
「ホルムアルデヒドを含有する家庭用品の規制基準の改正について」(厚生労働省、平成26年6月25日)の中に、ホルムアルデヒドについて次のように記載されています:
「ホルムアルデヒドは、繊維の加工等に用いられるが、特に樹脂加工に起因する遊離ホルムアルデヒドについては、抗原性が高く、皮膚障害の原因の一つとされていることから、昭和50年10月1日に「有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律(以下「家庭用品規制法」という。)」に基づき、皮膚に直接接触するおしめ等の繊維製品等の家庭用品について規制基準が制定された。」
環境省の「物質に関する基本的事項」では、ホルムアルデヒドのヒトへの影響について次のように記載しています(化学物質の環境リスク初期評価(平成9~12年度)結果[39物質] (env.go.jp) ):
- ホルムアルデヒドの疫学研究は数多く、組織傷害性の閾値は約1.0mg/m3とされている。
- 鼻腔上皮腫瘍の過剰発生が認められた労働者集団の疫学調査では、1.0mg/m3を超えるホルムアルデヒドに暴露していたことから、ホルムアルデヒドと鼻咽頭がんとの関連について疑いがもたれたが、因果関係は明らかでなかった(EHC, 1989)。
- ヒトへの影響については、0.05ppmの濃度では特に何も感じず、0.05~1.5ppmで神経生理学的所見がみられ、嗅覚閾値は0.05~1.0ppmであった。
- 眼への刺激性は0.01~2.0ppmでみられ、上気道刺激性は0.10~25ppm(他の物質の共存下では0.01ppmでも陽性所見があった。)、下気道の閉塞症状は5~30ppm、肺水腫・肺炎は50~100ppm、死亡は100ppm以上で観察された(ACGIH, 1992)。
- WHO欧州地域専門家委員会は、本物質の暴露による影響は平均値よりもピーク値の濃度に関係すると推測し、一般的な人達における明らかな感覚刺激を防ぐために、30分平均値で0.1mg/m3をガイドライン値としている。
- わが国の室内濃度指針値(厚生労働省)も同値を採用している。これらの知見から、0.1mg/m3 をNOAELとする。なお、この値はピーク値に注目した30分平均値であることから、暴露状況による補正を必要としない。(NOAEL:無毒性量)
16µg/gを超える溶出量が、mg/m3やppmに換算するとどの程度になるのか僕にはわからないのですが、小児が毎日不織布製マスクをつけるのはどうなのかなあと思います。
Ageing Research Reviews(Impact factor 11.788)の2022年1月号(Vol. 73)に、ホルムアルデヒドが加齢関連性の認知症に関与することが報告されています。Formaldehyde toxicity in age-related neurological dementia – PubMed (nih.gov)
これを読むと、僕のようなおじさんもマスクに含まれるホルムアルデヒドの量が気になりますね~
マスクの製造メーカーさんは、ホルムアルデヒド含量を示すことで、他社製品との差別化が出来ると思いますよ!
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